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「いつでも、キミにはミカタがいる」、その奥にある話
めぐろ区報令和8年10月1日号の特集「目黒の不登校児童・生徒の支援」では、さまざまな立場で子どもや保護者を支える支援者と、元不登校当事者の湯浅さんによる座談会をお届けしました。
このめぐろプラスでは、その座談会で語られた想いや体験をさらに深掘りしてテーマごとに紹介します。
不登校の背景や悩み、その後の歩み方は人それぞれです。本記事では、一つの正解を示すのではなく、子どもや保護者に寄り添う多様な支援や居場所、そこに関わる人たちの声をお届けします。
登壇者
- めぐろエミール 主任 永久保 佳孝さん
- スクールソーシャルワーカー 猪田 仁美さん
- 校内別室指導支援員 松林 陽子さん
- こども家庭センター 前田 紗季野さん
- sunow代表 佐野 祐介さん
- にじっ子サポーターズ代表 小園 桂さん
- ナナメのナカメ 大川 暁星さん
- アーティスト・フォトグラファー 湯浅 光さん(元不登校当事者)
学校内外で行われているさまざまな支援
まず必要なのは安心できる存在と場所
不登校の子どもたちの支えとなり、不登校の子どもたちの支えや一歩を踏み出すきっかけとなるのは、「安心できる存在」と「安心して過ごせる場所」の大切さでした。
人と関わることへの安心感を持ってもらう
こども家庭センターの前田さんは、不登校という形で課題が表れている子どもやその家族と日々向き合っています。支援の中で大切にしているのは、不登校という状態だけを見るのではなく、その背景にある子ども本人や家族の思いに耳を傾けることだといいます。
不登校という形は同じでも、子どもの行動の裏にある背景は一人一人異なります。保護者や子ども本人との信頼関係を築きながら、その時々の気持ちや状況を丁寧に聞き取り、その子に合った支援を一緒に考えていきます。
こども家庭センターにつながる子どもたちの中には、めぐろエミールやフリースクールなど学校以外の居場所に通うことも難しく、自宅で過ごしているケースも少なくありません。そのため、来所相談だけでなく家庭訪問も行い、まずは人と関わることへの安心感を持ってもらうことから支援を始めています。
前田さんは、対話だけでなく、一緒に遊んだり何気ない時間を共有したりしながら関係を築いていくことも大切だと話します。
まずは「この人となら話しても大丈夫かもしれない」と思ってもらうことが大切です。安心感が生まれると、「少し外に出てみようかな」「何かやってみようかな」という気持ちにつながることがあります。
ただし、そうした変化はすぐに表れるものではありません。
10分だけ話せる日もあれば、会えない日もあります。じっくり話せる時には1時間ほど一緒に過ごすこともあります。大切なのは、その子のペースに合わせること。時間をかけながら関係を築いていくケースが多いですね。
子どもたちが安心して気持ちを表現できるようになり、自分のペースで人や社会とのつながりを取り戻していく。そのために、前田さんは焦らず寄り添い続けることを大切にしています。
何気ない会話から生まれる安心感
子どもたちにとって安心できる存在は、必ずしも家族や先生など、普段から周りにいる人だけとは限りません。ナナメのナカメで子どもたちの居場所づくりに取り組む大川さんは、大学生だからこそ築ける関係性があると話します。
親とも先生とも違う、友達とも少し違う。
“ナナメの関係”だからこそ話せることもあると思っています。
ナナメのナカメでは、不登校の理由を無理に聞き出したり、学校のことを話題にしたりすることはありません。ゲームをしたり、雑談をしたり、好きなことの話をしたり。ごく自然な時間を一緒に過ごしながら関係を築いていきます。

大学生という存在は、子どもにとって少し不思議な距離感です。先生のように指導する立場でもなく、保護者のように心配し過ぎることもない。それでいて、子どもたちの話に同じ目線で耳を傾けてくれる身近な大人でもあります。大川さんは、そうした関わりの中で変化していく子どもたちの姿を見てきました。
最初はあまり話してくれなかった子が、少しずつ自分から話しかけてくれるようになったことがあります。こちらが何気なく投げかけた言葉や日々の積み重ねが、その子の安心感につながっていたのかもしれません。
ある子どもから、「ナナメのナカメに来た翌日は学校に行くってお母さんと約束したんだ」と聞いたことが特に印象に残っているといいます。
大きな変化を求めるのではなく、ただ安心して過ごせる時間があること。
その積み重ねが、子どもたちの次の一歩を支える力になっているのかもしれません。
安心できる人や場所との出会いが、自分らしい一歩につながる

スクールソーシャルワーカーの猪田さんは、区立の小・中学校を訪問し、子どもや保護者の相談を受けながら支援を行っています。
大切にしているのは、まず子どもや家族の話を丁寧に聞き、安心できる関係を築くことだといいます。
不登校の背景には、子どもや家庭によってさまざまな事情が見受けられます。また、簡単には理由が見つけられないことも多いようです。まずは子どもの気持ちを受け止め、安心して過ごせる環境を一緒に考えることから始めています。
支援の中では、子どもが持つ興味や関心、得意なことにも目を向けます。
最初は不安やつらさでいっぱいだった子どもたちも、安心できる場所で過ごす中で「実はこれが好きなんだ」「こんなことをやってみたい」という気持ちを少しずつ見せてくれるようになります。
猪田さんは、そうした興味や関心は子どもたちが自分らしさを取り戻していく大切なきっかけになると話します。
まずは安心して過ごせることが大切です。
その中で自分が好きなことややりたいことが見えてくると、「やってみたい」「外に出ていきたい」などという気持ちにつながっていきます。そうした思いが芽生えた時に、フリースクールや地域活動、居場所づくりの団体など、その子自身が選んだ場所へつながっていくこともあるように思います。
自分が選んだ場所で経験を積み重ねていくことで、少しずつ自信を深めていく子どもたちの姿を見てきました。その子自身の考えや判断で悩みながら、選びながら歩んでいくこと。一つ一つの小さな変化と、安心できる人や場所との出会いを重ねることで、その子らしい歩みにつながっていくと感じています。
学校や家庭だけでなく、地域のさまざまな人たちや居場所とのつながりもまた、子どもたちの安心感や自己肯定感を育てる大切な支えになっているといいます。
子どもが自分から話せるタイミングを待つ
子どもたちと関わる中で「安心して話せる関係づくり」を大切にしている、めぐろエミール主任の永久保さん。
子どもたちの中には、言葉にならない不安や悩みを抱えている子も少なくありません。しかし、その思いを大人が無理に引き出そうとしても、本当の気持ちはなかなか出てこないといいます。

子どもたちの心の中にあるモヤモヤを取り除いてあげたいと思うこともあります。でも、大切なのは無理に聞き出すことではなく、自分から話せるタイミングを待つことなんです。
自分の中にあった思いを言葉にできた時、子どもたちはすっきりした表情を見せることがあります。「自分で話せた」という経験そのものが、自信につながっているのではないかと感じます。
永久保さんは、安心できる存在や場所があるからこそ、子どもたちは少しずつ心を開き、自分自身の思いと向き合えるようになると話します。
自分を受け入れてくれる周囲の存在で「私はここにいて良いんだと感じた」
元不登校当事者の湯浅さんも、当時を振り返りながら「安心できる存在」の大きさを語りました。
中学2年生で学校に行けなくなった頃、母親はどう接してよいか分からず戸惑い、父親も状況を心配していたといいます。しかし、自身の子どもの不登校を経験した母親の姉から、「何があっても親はいつも通りでいること」という言葉をかけられたことで、家族の向き合い方が少しずつ変わっていったそうです。
湯浅さんは、後になって親からその言葉の真意を聞いたといいます。それは、子どもに「自分は大きな問題を起こしてしまった」「親に迷惑をかけてしまっている」と感じさせないためだったそうです。家族が過度に心配したり、特別な出来事として扱ったりするのではなく、これまでと変わらず接してくれることが、結果として安心感につながったと振り返ります。
なかでも印象に残っているのは、父親の存在でした。
父は毎朝、仕事に行く時に部屋にいる私に「行ってくるね」と声をかけてくれました。その言葉を聞くと、「私はここにいていいんだな」と思えたんです。
こうした家族の存在に支えられながら過ごす中で、湯浅さんと外とのつながりも少しずつ広がっていきました。

私が幼なじみに「転校したい」と相談した時にかけられた、「そんなことなら、うちの学校に早く来なよ」という言葉も大きな支えになりました。深く何があったのかを聞くわけではなく、快く迎えてくれたことで、「自分を受け入れてくれる人や場所は必ずある」と感じることができました。
家族や友人の何気ない言葉もまた、子どもにとっての安心できる存在になり得ます。そして、その安心感が、人とのつながりや新しい一歩につながっていくのです。
居場所は大人が用意して終わりじゃない。子ども自身が安心できる場へと育てていく
子どもはどう前向きになるのか
安心できる居場所は、自分で積み重ねながらつくっていく
子どもたちは、何か一つのきっかけで急に元気を取り戻すわけではありません。支援者たちが共通して語ったのは、「変化は少しずつ訪れる」ということでした。
フリースクールsunow(スノー)の佐野さんは、「何をしたから前向きになったのかは、明確に分からないことが多い」と話します。
居場所は用意して終わりではなく、子ども自身がその場所を居場所にしていくために努力しています。通い続ける中で「ここなら安心できる」と感じられるようになった時、気が付くと前を向いていることが多いんです。
慣れない場所へ足を運び、知らない人と関わることは、大人が想像する以上に大きなエネルギーが必要です。それでも少しずつ通い、好きなことをしたり、人と話したりする中で、「ここにいていいんだ」と感じられるようになる。その積み重ねが、自信や安心感につながっていきます。

sunow外観

内観
校内別室指導支援員の松林さんも、子どもたち自身が居場所を育てていく姿を何度も見てきました。
ある生徒は、校内別室には通えていたものの、パーテーションで仕切られたスペースからなかなか出ることができませんでした。しかしある日、「仲間に入っていいですか」と自分から声をかけ、ほかの子どもたちの輪の中へ一歩踏み出したそうです。
その後は、今度は自分が後輩たちの相談相手となり、周囲を支える存在になっていきました。
子ども同士の力は本当に大きいと感じます。同じような経験をした仲間がいることで、「自分だけじゃない」「ここにいていいんだ」と思えるようになるのかもしれません。
居場所は「戻ってこられる場所」でもある
にじっ子サポーターズの小園さんは、居場所にはもう一つの役割があると話します。
安心して過ごす中で、子どもたちのエネルギーは、それぞれのペースで少しずつ満ちていきます。何がエネルギーになるのかも、動き出すタイミングも一人一人違います。エネルギーが満ちてくると、子どもたちは自ら動き出します。子ども自身が持っている力を信じて、その時を待つこと、そして疲れた時にはまた戻ってこられる場所があることが大切だと感じています。
不登校の子どもたちは、いつも前へ進み続けるわけではありません。学校へ行ってみたり、人と会ってみたり、新しいことに挑戦したりすることもあります。その一方で、不安になったり疲れてしまったりすることもあります。
だからこそ、「いつ行ってもいいし、また戻ってきてもいい」という場所の存在が大きな支えになります。
小園さんは活動を続ける中で、いつでも戻ってこられる「定点のような場所」の大切さを改めて実感しているそうです。安心して過ごせる場所があり、そこからまた一歩踏み出したり、疲れた時には戻ってきたりする。そんな子どもたちの姿を見ていると、その繰り返しが、その子なりの歩みにつながっているのではないかと感じていると話します。
小さな一歩を積み重ねる
スクールソーシャルワーカーの猪田さんも、安心できる環境の中でこそ、子どもたちの興味や関心が湧いてくると話します。
まずは安心できる場所で、自分の好きなことや志向性を見つけることが大切です。自分が選んだ場所で小さなステップを積み重ねていく。その過程が、その子らしい歩みにつながっていくと思います。
人とのつながりを少しずつ広げながら、「自分らしく過ごせる場所がつくれる」と感じられるようになること。その積み重ねこそが、前を向く力になっていくのではないでしょうか。
それぞれのペースで歩んでいい
不登校の背景も、その後の歩み方も一人一人異なります。
座談会では、「こうすれば前向きになれる」という共通の正解はないという声が何度も聞かれました。
ある子は家族の存在に支えられるかもしれません。友人との出会いが転機になる子もいれば、好きなことに没頭する時間や安心できる居場所の存在が支えになる子もいます。
元不登校当事者である湯浅さんにとっては、家族や友人とのつながりが大きな支えとなりました。しかし、それはあくまでも湯浅さん自身の経験の一つです。どんなきっかけが力になるかは人それぞれであり、歩む速度も違います。
大切なのは、自分に合った安心できる人や場所と出会い、自分のペースで歩み続けられること。焦らなくてもいい。比べなくてもいい。そうした支援者たちの想いが、この座談会を通して伝わってきました。
「好き」が自信につながる
自分の「好き」が、自分を支えてくれた
湯浅さんにとって、不登校だった時期を支えてくれたのは、絵を描くことでした。文章を書くことやものづくりに夢中になる時間もまた、大切な支えになっていたといいます。
家で絵を描いたり、ものづくりをしたりする時間が自分にとっての救いでした。
学校へ行けないことや人にどう見られるかばかり気にしていた時期でしたが、好きなことに集中する時間は、自分らしさを取り戻す時間でもありました。

当時は将来につながるとは思っていなかったものの、その興味や関心は大学での学びや、現在も仕事の傍ら続けているアーティスト・フォトグラファーとしての活動につながっています。
「今振り返ると、“好き”を否定されない場所や時間があったことは、とても大きかったと思います」
湯浅さんはそう振り返ります。
一方で、湯浅さんは自身の経験がすべての人に当てはまるわけではないとも話します。
子どもによって安心できる場所も、支えになるものもさまざまです。家族との時間が支えになることもあれば、地域の居場所や友人との出会い、好きなことに没頭できる時間が力になることもあります。
しかし共通しているのは、自分が大切にしているものを否定されず、「これをしている時間が好き、ありのままの自分」と思える経験が、自信や自己肯定感につながっていくということでした。
子どもたちの「その子らしさ」に目を向ける

元不登校当事者の湯浅さんが「好きだった絵を描くことが自分を支えてくれた」と振り返ったように、校内別室指導支援員の松林さんも、支援の現場で子どもたちの興味や関心が大きな力になっていると感じています。
「子どもたちは、それぞれに好きなことを持っています。不登校の期間があることで、そのことを深く掘り下げていたり、大人も驚くほど詳しくなっていたりすることもあるんです」
ただ、そうした一面は最初から見えているわけではありません。
校内別室を訪れる子どもたちの多くは、不安や緊張、自信のなさを抱えています。自分のことを話すことが難しかったり、他者と関わることに慎重になっていたりすることも少なくありません。だからこそ松林さんは、最初から何かを聞き出そうとはせず、雑談やゲームなどを通してゆっくり関係を築いていくことを大切にしています。
最初は何が好きなのかも教えてくれません。でも、日々一緒に過ごす中で、好きなアニメの話やゲームの話、夢中になっていることが少しずつ見えてくるんです
そうして見えてきた“好き”は、その子自身を理解する手掛かりにもなります。
学校という場ではどうしても勉強や成績に目が向きがちです。しかし松林さんは、子どもたちの将来を考えた時、自分が好きなことや心が動くものを大切にする時間も同じくらい重要だと考えています。
勉強は後から取り戻せるかもしれません。でも、自分が本当に好きなことや得意なことに気付き、それを育てていく時間は今だからこそ大切なのではないかと思います。
松林さん自身も、子どもたちとの関わりを通して新しい世界に触れることが多いといいます。
私が知らないゲームやアニメの話を教えてもらうこともたくさんあります。子どもたちが好きなことを話している時の表情は本当に生き生きしていて、その姿を見ると「その子らしさ」はこういうところにあるんだなと感じます
子どもたちが夢中になっていることや好きなことの中には、その子らしさが表れることがあります。そうした一面を周囲に認めてもらったり、自分自身でも気付いたりする経験は、「これが好き」「これならできる」という自信につながることがあります。好きなことや得意なこととの出会いは、自分らしさを見つめ直すきっかけにもなります。その積み重ねが、自己肯定感を育み、その子らしい歩みを支える力になっていくのかもしれません。
「好き」から生まれる人とのつながり
にじっ子サポーターズの小園さんは、子どもたちが安心して過ごせる居場所を続けていく中で、「好きなこと」が大きな力になる場面を数多く見てきました。
子どもたちの中には、電車や虫、絵を描くことなど、特定の分野に強い興味や関心を持つ子も少なくありません。そうした「好き」を大人や仲間と共有することで、新たな活動や人とのつながりが生まれることもあるといいます。
電車が大好きな子が、自分たちで企画を考えてイベントを開いたこともあります。大人はサポート役に回りながら、一緒に形にしていきました。
好きなことについて話したり、人に伝えたりすることから、人とのつながりが広がっていくこともあります。
また、小園さんは、子どもたちの興味や関心を一人で完結させるのではなく、人と人をつなぐきっかけにしていきたいと考えています。
絵が好きな子もいれば、虫が好きな子もいます。いろいろな人がいるからこそ、「こんなことをやってみたらどう?」と周りの大人たちが声をかけ、一緒に形にしていくことができます。
小園さんは、「自分の“好き”を誰かと共有したり、同じ興味や関心を持つ仲間とつながったりする経験が、自信や次の一歩につながることもある」と感じていると話します。
読者の皆さんにお伝えしたいこと
保護者も安心して話せる場所を必要としている
安心して本音を話せる場所の大切さ

にじっ子サポーターズ代表の小園さんは、自身も不登校を経験した子どもを持つ保護者の一人です。その経験もあり、「保護者が安心して話せる場所」の大切さを改めて感じるようになっているといいます。
「振り返ってみると、あの頃に、今のにじっ子サポーターズのような場所があったらよかったな、と思います」
同じ不登校という経験でも、不登校の背景や子どもの状況、保護者の気持ちは家庭ごとに異なります。
そうした思いもあり、にじっ子サポーターズでは、保護者同士が集まり、思いや悩みを自由に話せる「にじカフェ」(月1回)や、親子の居場所「にじのえんがわ」(週1回)を開いています。
「私たちは否定もしないし、意見を押し付けることもしません。まずは話を聞くことを大切にしています」
実際に参加者の中には、涙を流しながら胸の内を語る保護者もいるといいます。
こんなことまで話してくれるんだと思うこともあります。本当に一人で抱え込んでいたんだな、と感じることがあります。
活動を続ける中で小園さんが実感しているのは、支援は子どもだけに向けられるものではないということです。
子どもを支える保護者も、とても大変な状況にあります。だからこそ、保護者自身が安心できる場所やつながりを持つことも大切だと思っています。
参加者同士が「こんな場所があるよ」「こんなところにつながったよ」と声をかけ合い、必要な人が地域の居場所や人とつながるきっかけになることもあります。
小園さんは、こうしたつながりの積み重ねが、子どもだけでなく地域全体を支える力になると感じています。
活動を続ける中で、「個」を支えるだけではなく、「地域のコミュニティーを育てる」ことが、やっぱり大切なんだと改めて感じています。近くに気軽に話せる人がいる。それだけでも大きな安心につながると思います。
保護者にも安心して話せる場所を
こども家庭センターの前田さんも、不登校支援では子ども本人だけでなく、保護者への支援も欠かせないと話します。不登校の背景や状況は家庭ごとに異なり、保護者もまた、先が見えない不安や悩みを抱えながら日々子どもと向き合っています。
お子さんのことで悩まれている保護者は本当にたくさんいらっしゃいます。だからこそ、保護者の話をしっかり聞くことも大切な支援の一つだと思っています
こども家庭センターでは、子どもへの支援だけでなく、保護者の気持ちにも耳を傾けながら伴走することを大切にしています。
子どもも保護者も、それぞれが安心できる存在や場所とつながることが大切です。「少し話してみようかな」と思える相手と出会い、思いを言葉にしていくことが、一歩につながることもあります。
子どもと同じように、保護者にとっても、安心して相談できる相手や場所が大切です。
支えが必要だったのは、私だけじゃなかった
元不登校当事者の湯浅さんも、振り返ってみると、当時は自分だけでなく家族もまた不安を抱えていたのではないかと話します。
母の姉からの言葉や支えがなければ、母は本当に困っていたと思います。あの言葉があっても心配はしていたと思いますし、どう接したらいいのか、どういうゴールを目指したらいいのか、きっと分からなかったと思います。
湯浅さん自身も、当時は家族がどのような思いでいたのかを十分に理解できていたわけではありません。しかし大人になった今だからこそ、保護者にも支えが必要だったことを実感しているといいます。
私は両親が共働きで、日中は家に一人でいることが多かったんです。親からすると、何を考えているのか、どんな状態なのか分からなかったと思います。そういう時に、どうコミュニケーションを取ればいいのか、誰かに相談できる場所は必要だったと思います。
また、湯浅さんは子どもの立場からも、保護者が相談できる場所の存在は大切だと感じています。
子ども本人が相談するのはもちろんですが、保護者が安心して話せる場所があることも大事だと思います。親が一人で抱え込まないことは、結果として子どもの安心にもつながる気がします
子どもと家族、どちらにも寄り添う支援を
子どもの不登校に向き合う中で、保護者も先の見えない不安や悩みを抱え、日々試行錯誤することがあります。
目黒区では子どもへの支援とともに、保護者が安心して相談できる環境づくりも大切にしています。今回の座談会でも、保護者が安心して話せる場所や、同じ経験を持つ人とのつながりの大切さが語られました。
誰かに話すことで自分の気持ちに気付いたり、考えが整理されたりすることもあります。すぐに答えが見つからなくても、「話してみようかな」と思ったときに、安心してつながれる相手や場所があることが大切です。子どもと保護者、それぞれの思いやペースを尊重しながら、安心して相談できる環境づくりに取り組んでいます。
支援者たちが大切にしていること
子どもの歩みや今の気持ちを受け止める
めぐろエミール主任の永久保さんが大切にしているのは、子どもたちに答えを示したり、背中を押したりすることではなく、一人一人の歩みや気持ちを受け止めることです。

学校ではどうしても「頑張って」と言葉をかけることがあります。でも、不登校の子どもたちはすでに十分に頑張っていると認めることが大切です。
子どもたちは、学校へ行けないことに悩み、自分を責め、不安を抱えながら日々を過ごしています。そんな子どもたちに必要なのは、今の自分を認めてもらうことだと永久保さんは考えています。
私たちは「支援」に徹することを大切にしています。話をとことん聞き、その子がこれまで歩んできた道のりや今抱えている気持ちを受け止める。まずはそこから始まると思っています
また、子どもとの関わり方に悩む保護者に向けて、日々の小さな変化や成長に目を向ける大切さについて、次のように話します。
何でもいいから、一日に一つでも子どもを認めたり、褒めたりしてほしいんです。子どもは認められることで少しずつ自信を取り戻していきます
永久保さんは、支援とは子どもに答えを与えることではなく、その子が持っている力を信じ、前向きに歩み出せるよう、そばで支えることだと考えています。
子ども本人が安心して過ごせるようになることで、少しずつ自分のペースで次の選択肢を考えられるようになる。子どもたちが自分のペースで進んでいけるよう、そばで見守り続けたいと話します。
その子に合った答えを一緒に探す
フリースクールsunowの佐野さんが大切にしているのは、子どもたちを尊重することです。
よく共感が大事と言われますが、私は簡単に「分かるよ」とは言わないようにしています
不登校の背景も、感じていることも、子どもによってまったく異なります。
“不登校”という言葉は同じでも、今に至るまでの経験や思いは、一人一人異なります。本当の意味で、その子のことを100パーセント理解することはできないと思っています。だからこそ、分かったつもりになるのではなく、その子のことを知ろうとし続けることが大切なんです
佐野さんは、子どもだけでなく保護者に対しても同じ姿勢で向き合っています。

「それぞれ違うからこそ、正解は一つではありません。その子のことを知ろうとし続けること、その人自身を尊重することを大切にしています」
支援の中で大切なのは、答えを与えたり、進む道を決めたりすることではありません。その子が何を感じ、何を望んでいるのかを丁寧に受け止めながら、その子に合った答えを一緒に探していくことです。佐野さんは、そうした姿勢で日々子どもや保護者と向き合っています。
一人一人に合った歩みを支えるために
立場や活動の場は違っていても、支援者の皆さんの話から見えてきたのは、「こうすれば大丈夫」という一つの正解を示すのではなく、一人一人の歩みに寄り添おうとする姿勢でした。
言葉になるまで待つこと。
今の気持ちを受け止めること。
好きなことや得意なことに目を向けること。
子ども自身の選択を尊重すること。
保護者の不安や悩みに耳を傾けること。
支援の形はそれぞれ違っていても、子どもや保護者が自分らしく過ごせるよう願いながら関わっている点は共通していました。
そして、その根底には
「あなたのペースで大丈夫」
というメッセージが流れていたように感じます。
支えてくれる人は、きっといる
今回の座談会では、子どもたちを支えるさまざまな立場の人たちから話を聞きました。そこで繰り返し語られたのは、「一人で頑張らなくていい」ということでした。
子どもたちにも、保護者にも、それぞれのペースがあります。
学校に行くことだけが正解ではありません。誰かに相談することも、今はまだ話せないことも、どちらもあっていいのです。
安心できる人や場所と出会うこと。疲れた時には立ち止まり、また自分のペースで歩き出すための居場所があること。
目黒区には、子どもにも保護者にも寄り添いながら、その歩みを支えようとする人たちがいます。
子どもにも保護者にも、安心して話せる人や場所があります。
一人で抱え込まなくても大丈夫です。
この記事が、自分や家族のペースを大切にしながら、頼れる人や居場所につながるきっかけになれば幸いです。
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