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更新日:2026年6月15日

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特集

みなさんも鳥の言葉がわかる。動物言語学者 鈴木俊貴さんインタビュー

区の鳥であるシジュウカラ、実は鳴き声で言葉を話しているそう。今回は科学エッセイ「僕には鳥の言葉がわかる」の著者である鈴木俊貴さんに、鳥たちが生きる世界の奥深さや野鳥観察の面白さについてお聞きしました。これを読めば、あなたも「鳥語」が分かるかも?

お問い合わせ:広報広聴課(電話:03-5722-9486、ファクス:03-5722-8674)

鈴木俊貴さん
東京大学先端科学技術研究センター准教授。動物行動学の分野で鳥語研究に従事し、シジュウカラの音声コミュニケーションに関する論文が世界的に評価される。令和4年の国際行動生態学会で、新たな学問である「動物言語学」を提唱。自身の研究をまとめた科学エッセイ「僕には鳥の言葉がわかる」は発行24万部のベストセラー。

双眼鏡をのぞいたら、鳥たちの世界が分かり始めた

いきものたちへの尽きることのない興味

私は小さい頃からいきものが大好きで、姿形が自分と全く違ういきものたちが、みんな一緒に地球で暮らしていることを不思議に思っていました。「虫や鳥たちは何を考えているのだろう?」「世界をどう見ているのだろう?」そんなことを考えながら、カブトムシやバッタなどを集めてずっと観察していました。単なる好奇心から生まれたこれらの疑問が、実は学術的な問いだったことに気が付いたのは、もう少し大人になってからでした。

好きが高じて、鳥語の研究者に

鳥を身近に感じるようになったきっかけは、高校生の頃に双眼鏡を手に入れたことです。お年玉で買ったので、せっかくだから活用しようと外で鳥たちを観察する日々が始まりました。双眼鏡を通して自然界にいる鳥たちの自由な姿を見るのは、外からいきものを持ち帰って観察するのとは大きな違いがあります。巣を作っていたり、子育てをしていたり。
そんな鳥たちを見ると、まるで自分が動物の世界へ入り込んだかのような感覚になれるんです。そうして野鳥観察にのめり込んだ私は、鳥たちをもっと深く知るために研究者になりました。現在は鳴き声に焦点を当て、鳥たちが話す「鳥語」について探究しています。

鳴き声も、生き方も野鳥観察は新発見の連続

鳥たちが創る新しい文化


植木鉢に巣を作る

鳥語研究をしていると、鳥に関する面白い発見や、新たな視点にたくさん出会います。その一つが、「シジュウカラは自らの知恵で生きる世界を広げている」という事実です。目黒区に限らず、都内ではここ50から60年でシジュウカラが増えています。きっとシジュウカラの世界の中で、植木鉢などの人工物をうまく利用して生きていく文化が広まっているのでしょう。鳥たちは植木鉢に巣を作れることが本能で分かっているわけではありません。生活の中で文化を生み出し、自分たちの手で世界を変化させています。これは私たちと同じですよね。人間も鳥もおそらく他の動物たちも、みんな同じように自分たちで文化を生み出し、世界を変えているんです。

鳥語を読み解き、鳥たちの世界をのぞく

シジュウカラに関する新発見を語る上で、鳴き声の話は欠かせません。実は、人間だけでなく鳥も言葉を話しているんです。「ジャージャー」と鳴いたら「ヘビ」、「ヒヒヒ」と鳴いたら「タカ」という具合に。さらに、二つの鳴き声を組み合わせて文を作っていることも明らかになっています。「警戒しろ」を表す「ピーツピ」、「集まれ」を表す「ヂヂヂヂ」を組み合わせて「ピーツピ・ヂヂヂヂ」と鳴き、「警戒して集まれ」と周りに伝えていることが分かりました。これまで、鳴き声は単なる感情表現だと考えられてきましたが、鳥たちにはきちんと言葉を使って仲間とコミュニケーションを取る力があるんです。まちを歩いていてふと聞こえてくるさえずりも、もしかすると「鳥語」なのかもしれませんね。

シジュウカラの「鳥語」の例1 ビビビビビは「餌をちょうだい」(ヒナの声)、ツツピ―ツツピ―は縄張り宣言

シジュウカラの「鳥語」の例2 ピーツピは「警戒しろ」、ヂヂヂヂは「集まれ」

鳥たちは多言語話者

カラ類の仲間は他種であっても、
鳥語の意味を理解している

トリリンガルと称して、コガラとヤマガラとシジュウカラが、それぞれの鳴き声で「集まれ」と理解しあっているイラスト

さらに鳥たちを観察していると、メジロとシジュウカラはお互いの言葉が分かるということに気が付きました。違う種でも言葉が通じるのは、人間に例えると多言語話者みたいで面白いですよね。それぞれ鳴き声は違っていても言葉が通じるという事実が、混群(注釈)として生活する鳥たちの世界や生き方を特徴づけていると感じます。

(注釈)異なる種の鳥が、一つの群れとなって行動すること

誰も体験していない「ワクワク」を探そう

動物たちの言葉を聞けば、「いきものの見え方」が変わる

動物はみんな、言葉を話しているのかも

動物たちのコミュニケーションを新しい視点から研究するために、「動物言語学」という分野を創りました。現在はシジュウカラをメインに行動観察や実験を行っていますが、もっと多くの動物が言葉を話しているのではないかと考えています。だって、世界には1万種を超える鳥類が存在するし、哺乳類も5千種を超えている。ひょっとしたらカエルもしゃべっているかもしれません。言葉は人間だけのものであるという固定観念を取っ払い、動物言語学という新しい枠組みから、いきものたちが話す言葉についてさらに研究を深めたいと考えています。


提供 : 鈴木俊貴

自然をもっと身近に

これまで私たちは鳥たちが話していることに気が付いていませんでした。先入観はもちろんですが、身近な自然に目を向ける機会が減っているのも原因の一つだと考えています。言葉は人間特有の能力だと決めつけて、周りを見られなくなっている私たちは、いわば「井の中の蛙(かわず)」です。動物たちの言葉を聞き、その世界に気付くことができれば、自然とのつながりを取り戻すことができるはず。そうすれば、身近な環境問題に気付き、解決方法を思いつく、なんてことにつながるかもしれません。動物の言葉を研究することは、「蛙」となってしまった人間を「救出する」ことにもつながると考えています。そのために、今後も広く社会に動物言語学を発信し続けたいです。近々、「僕には鳥の言葉がわかる」の子ども向けバージョンが出版されます。小・中学生に興味を持ってもらうため、漢字に読み仮名を振って読みやすくしました。鳥たちの世界を知ることで、子どもたちにもぜひ「ワクワク」を感じてほしいです。

実体験が世界を広げる鍵になる

都内にシジュウカラが増えてきている今は、まさに絶好の野鳥観察チャンスです。まずは一つでいいので、シジュウカラ語を覚えて観察してみてください。世界の解像度がぐっと上がる感覚を体験できるはずです。最近では、気になったことはまずAI(人工知能)に聞いてみるというかたが増えていますが、実際に経験することでしか分からないこともあります。スマートフォンの画面上ではなく、自然の中で自分なりの発見をし、「ワクワク」を体験してほしい。その第一歩として、私の発信が鳥の声に耳を傾けるきっかけになればうれしいです。「僕には鳥の言葉がわかる」の巻末には鳥の声が聞ける二次元コードをつけているので、よければ聞いてみてください。

鈴木先生!自然観察を楽しむコツを教えてください!

Step1 耳を澄ませて、鳥たちの声を聞く

鳥を探すには、まず鳴き声に耳を澄ませましょう。双眼鏡がなくても、鳥の声に耳を傾けることはできます。もし聞こえたら、声がする方に向かってみてください。その先に鳥たちがいた場合、どの鳥が鳴いているのか、何をしているのかなどを観察することが大切です。実は鳥たち自身も、まず鳴き声で他の鳥の存在を把握しています。鳥たちの声を聞くことが、野鳥観察の第一歩です。

Step2 鳥との程よい距離感を知る

観察に慣れてきたら、次は鳥との適切な距離感を意識してみてください。鳥を見に行ったらすぐ飛んで逃げてしまうと思うかもしれませんが、それは一気に近づき過ぎたということです。野鳥観察も回を重ねると警戒されない距離感が徐々に分かるようになってきます。大事なのは、自分が鳥を見ている時、鳥も自分を見ているという認識を持つこと。そうすれば、自然と程よい距離感がつかめるようになってきますよ。

シジュウカラをもっと知ろう!

シジュウカラって、どんな鳥?

区の鳥に指定されているシジュウカラは、黒い頭に白い頬、胸から腹の中央にまっすぐ伸びた黒い模様が特徴の益鳥です。益鳥とは、人間の生活に悪影響を与える害虫を捕食してくれる鳥のこと。シジュウカラは枝から枝に飛び回って餌を探し、昆虫を食べることで樹木の害虫退治に一役買っています。人に懐くため、巣箱にもよく訪れます。秋の終わりから冬にかけては、区内でも小さい群れをなして飛ぶ姿が見られることもあります。

 

 

生物学的な分類 スズメ目シジュウカラ科
大きさ 全長15センチメートル程度
すみか(巣) 木にできた穴、ブロック塀の穴、ひっくり返った植木鉢の中など
オスとメスの見分け方 胸から腹にかけて伸びる、ネクタイ状の黒い模様の太さ
(オスの方がメスより太い)

好物(餌) 植物の種、実、昆虫など
天敵 ヘビ、モズ、カラス、タカ

野鳥観察スポット

林試の森公園

オナガ

シジュウカラはもちろん、オナガ、コゲラなどの鳥が観察できるスポットです。身近なカルガモ、カワセミ、ウグイスなどの姿も確認できます。耳を澄ませるといろいろな鳥たちの声が聞こえてくるこの場所は、野鳥観察にうってつけです。

林試の森公園

駒場野公園

メジロ

園内に柿の木があり、実が熟した冬にはエナガ、メジロ、コゲラなどが集まる、格好の観察ポイントです。園内を歩けば、季節を問わずシジュウカラにも出会えます。普段何気なく利用する公園も、楽しみ方次第で立派な観察スポットになります。

駒場野公園

区が令和6年から7年にかけて実施した区内の野鳥調査で、最も発見報告が多かったのがシジュウカラでした。
時期によらず一年を通して観察され、住宅の庭先など区内の至る所で出会うことができます。

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