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更新日:2025年2月18日

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令和7年第1回目黒区議会定例会での区長所信表明(令和7年2月17日)

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はじめに

令和7年第1回区議会定例会の開催にあたり、区政を取り巻く諸情勢と7年度の区政運営の基本的な考え方について所信を申し述べ、区民の皆様と議員各位のご理解とご協力をお願い申し上げます。

国際社会においては、ロシアによるウクライナ侵略の長期化や不安定な中東情勢など、緊迫の度合いが高まっております。また、地球温暖化による気候変動が世界全体の課題として顕在化してきております。

こうした国際的規模の事柄が要因となり、原材料費等の高騰による物価上昇や風水害の激甚化・頻発化といった問題が、直接的に区民生活にも大きな影響を及ぼすようになってきています。

経済の点においては、昨年は、日経平均株価が史上最高値(さいたかね)を更新したほか、円相場が歴史的な円安局面となるなど、大きく変動いたしました。

この様に、さまざまな面で不確実性の高い状況が一層顕著となってきており、区政運営には、これまで以上に、先々の課題を捉えながら、変化する状況に柔軟に対応することが求められてございます。

区政を取り巻く状況認識

それではまず、区政を取り巻く状況認識について申し上げたいと存じます。

第一は、経済状況と区財政についてでございます。

本年1月の月例経済報告によれば、「景気は、一部に足踏みが残るものの、緩やかに回復している。先行きについては、雇用・所得環境が改善する下で、各種政策の効果もあって、緩やかな回復が続くことが期待される。ただし、欧米における高い金利水準の継続や中国における不動産市場の停滞の継続に伴う影響など、海外景気の下振れが我が国の景気を下押しするリスクとなっている。また、物価上昇、アメリカの政策動向、中東地域をめぐる情勢、金融資本市場の変動等の影響に十分注意する必要がある。」とされております。

区の令和5年度普通会計決算では、歳入は、特別区税が雇用・所得環境の改善が見られたことに伴い増となり、また、特別区交付金が財源となる法人住民税が増収となったことに伴い増となり、一般財源総額は前年度比56億円余、7.3パーセント増の828億円余となりました。

歳出は、基本計画や実施計画に定める取組への対応を積極的に行うことを基本としながら、コロナ対策や原油価格・物価高騰対策に優先的に取り組んだ結果、総額1,237億円余となりました。前年度との比較では、新型コロナワクチン接種に係る物件費や基金への積立金が減となった一方で、私立保育所への保育委託などの扶助費や、子育て応援給付金などの補助費等が増となったことなどにより、1億円余、0.1パーセントの増となってございます。

令和7年度は、歳入面では、特別区税や特別区交付金が堅調に推移するものと見込まれる一方で、不安定な国際情勢などに伴う原油価格・原材料価格の高騰、ふるさと納税の影響による区税収入の減収影響拡大、国による新たな税源偏在是正の動きといった懸念があるため、予断を許さない状況でございます。

第二に、国及び東京都の動きについてでございます。政府は昨年6月に閣議決定した「経済財政運営と改革の基本方針2024」において、「所得増加・賃上げ定着」、「中堅・中小企業の活性化」、DX・GXへの投資拡大など「投資の拡大・革新技術の社会実装による社会課題への対応」、「スタートアップのネットワーク形成や海外との連結性向上による社会課題への対応」、デジタル田園都市国家構想など「地方創生・地域における社会課題への対応」、「幸せを実感できる包摂社会の実現」、「持続的な経済成長の礎となる国際環境変化への対応」、「防災・減災及び国土強靱化の推進」を掲げております。

また、昨年11月に閣議決定した「国民の安心・安全と持続的な成長に向けた総合経済対策」において、全ての世代の現在・将来の賃金・所得増、物価高の影響に対する家計・事業者への支援、国民の安心・安全の確保などに取り組むとしております。

東京都は「「未来の東京」戦略version up 2024」において、今が人・知・技術・産業・情報の集積地である東京のポテンシャルを最大限活かして持続可能な未来へつなげる時だとし、「人が輝く」、「国際競争力の強化」、「安全・安心」、「構造改革」の4つを政策強化のポイントとしております。

区は、基礎自治体として主体的に政策を進めることと合わせ、国や都の実施する政策を効果的・効率的に地域課題解決に結びつける視点を持ち、国や都と連携しながら、区民生活を支えるために必要な取組について適切に実施してまいります。

第三に、本区の人口構造の変化についてでございます。

政府によると、我が国の人口減少は、2030年代にさらに加速することが見込まれております。目黒区においては、人口は令和2年をピークに一旦減少に転じましたが、令和4年3月以降、若干の回復傾向を見せております。年代別では令和2年1月以降、30代後半から40代が減少傾向となり、50代は増加傾向にある状況が概ね継続しているところです。

直近では20代の回復傾向が見え始めていますが、今後とも人口の動向を慎重に注視・分析していく必要がございます。

区政運営の基本的な姿勢

次に、区政運営の基本的な姿勢について申し上げます。

基本構想に掲げたまちの将来像である「さくら咲き 心地よいまち ずっと めぐろ」の実現に向けて、令和4年3月に「目黒区基本計画」を策定し、基本構想で示した「区政運営方針」に基づく区政運営の基本的考え方及び施策立案の視点を定めております。

これを踏まえ、令和7年度の区政運営の基本姿勢については、以下の三点のとおりといたします。

一点目は、平和への貢献と人権・多様性を尊重する地域社会の実現です。

令和7年度は終戦から80年を迎える節目の年となります。戦争を経験した方々が少なくなる中にあっても、引き続き、平和都市宣言区として、戦争の悲惨さ、平和の尊さを次世代に継承すべく、鋭意努力してまいります。

また、令和7年度は「人権の世紀」といわれる21世紀となってから四半世紀が経過する年度となります。国際社会が目指す、多様性を尊重する社会に向けて、区におきましても、一人ひとりの違いを受け入れ、認め合える地域社会の実現に、全力を尽くしてまいります。

二点目は、地域コミュニティの形成と多様な主体との連携の推進です。

人口構造や社会状況の変化に伴い、多様化・複雑化する地域課題に的確に対応していくためには、地域社会を構成する区民・団体・企業・教育機関・行政など多様な主体が、連携・協力をしながらより良い地域社会を形成していく必要がございます。

防災、福祉、子育て、環境、教育、文化・スポーツといった幅広い分野で、ネットワークを形成し、連携を推進していくために必要な支援や活性化に向けた取組を推進してまいります。

三点目は、持続可能な行財政運営に向けた取組の推進です。

区有施設見直しのリーディングプロジェクトとして進めてきた「新たな目黒区民センター等整備・運営事業」につきまして、昨年公表した公募条件での事業実施を中止する決断をいたしました。

この要因は、建築資材や人件費など施設建設コストの想定を超える急騰であり、本区では、今後、老朽化する区有施設の更新や、市街地再開発の推進など、長期的ビッグプロジェクトが本格化していくことを踏まえますと、この機をとらえ、限られた経営資源を効果的に活用していくための取組を加速させていくことが必要であると考えております。

そのための組織執行体制を整備するなど、区民サービスの向上と事務事業の効率化を両立させながら、持続可能な行財政運営を実現する取組を進め、将来にわたって区民生活をしっかりと守っていくことに全力を尽くしてまいります。

重要課題と施策の方向性

これら三点の基本姿勢を踏まえた基本計画の着実な実行に向け、中長期的な視点に立ち、将来にわたって持続可能な行財政運営を行っていくため、以下の五点を令和7年度の重要課題と位置付けて区政運営を進めてまいります。

(1)多様性と包摂性のある地域社会の構築

まず一点目は、多様性と包摂性のある地域社会の構築でございます。

誰もが一人の人間として尊重される多様性と包摂性のある、誰にとっても暮らしやすい社会を目指し、各行政分野の取組を進めてまいります。

人権に対する意識調査を実施し、幅広く現状把握をするとともに、障害者参加型防災訓練の内容充実、福祉分野の人材確保などに向けた事業の実施、ひきこもり支援ステーション事業の開始、手話に関する施策の推進など福祉分野における取組を進めてまいります。また、約11,000人の外国籍の区民の方々が安心して暮らせる環境や交流機会の確保など多文化共生の推進にも取り組んでまいります。

「めぐろ芸術文化振興プラン」と「目黒区スポーツ推進計画」を改定するなど、地域社会の理想の姿を様々な切り口から再検討してまいります。

また、誰もが暮らしやすい地域社会の土台となる平和への取組をこれまでも継続してまいりましたが、令和7年度は終戦から80年、平和都市宣言から40年の節目の年となることから、小中学生広島派遣の派遣者数の増など、平和記念事業の充実を図ってまいります。

(2)安全・安心への取組と計画的なまちづくり

二点目は、安全・安心への取組と計画的なまちづくりでございます。

昨今、連続発生している匿名・流動型組織による侵入強盗事件に対する防犯対策などの推進、避難所生活課題に対する備えの充実など防災対策、感染症に係る訓練等の実施など健康危機管理の強化を行ってまいります。併せて消費者被害の未然防止や早期解決に向けた啓発の強化を図ってまいります。

また、まちづくりに関しては、喫煙所整備と合わせ路上喫煙及び歩行喫煙禁止の啓発、区有施設への再生可能エネルギー設備の積極導入などゼロカーボンシティの実現に向けた取組を行ってまいります。さらに木造住宅密集地域の居住環境の改善とともに、さくら再生プロジェクトや公園リノベーション工事などによるみどりの保全と創出など多角的な取組を進めてまいります。

加えて、令和5年度から検討を行っている建物の高さ制限のあり方の見直しについて、引き続き説明会等を丁寧に行いながら、都市計画決定に向けて取り組んでまいります。

(3)子どもを取り巻く環境整備と教育の充実

三点目は、子どもを取り巻く環境整備と教育の充実でございます。

昨年9月の第三回定例会において、私は、目黒のすべての子どもの健やかな成長を願い、都立児童相談所の誘致という大きな決断を致しました。

平成30年3月に発生した大変不幸な事件が二度と起こらないよう、児童相談所の早期整備に向けて東京都との協議を進めます。

また、改修整備をした旧鷹番保育園に改正児童福祉法に基づき設置が求められている「こども家庭センター」を開設し、妊娠期から青年期にわたる切れ目ない支援を母子保健と児童福祉の両機能の連携により充実させてまいります。

更に、同施設内に設置される東京都の児童相談所サテライトオフィスや都立品川児童相談所から移管され、児童相談センター内に新たに設置される組織において、渋谷区を含めた三者の連携構築、児童虐待に対する迅速な対応と機能強化に努めてまいります。

加えて、今年度改定の「子ども総合計画」に基づき、中高生を含めた多様な居場所づくりなどを行ってまいります。

学校教育では、新たに開校する目黒南中学校、目黒西中学校への支援をはじめ、各区立小・中学校において「主体的・対話的で深い学び」の視点からの授業改善の取組や1人1台学習用情報端末の更新などの学校ICT環境整備、特別支援教育の推進、不登校児童・生徒への対応等を着実に進めていくとともに、部活動の地域移行に向けた取組や学校業務の委託など教職員の働き方改革を進めてまいります。加えて先行実施校となる原町小学校、不動小学校、第一中学校における学校運営協議会の設置及び地域学校協働活動との一体的な推進により、「地域とともにある学校づくり」と「学校を核とした地域づくり」に向けて取り組んでまいります。さらに「子ども読書活動推進計画」を策定して子どもたちが本に親しむ機会を増やしてまいります。

(4)システム標準化への取組とDXの推進

四点目は、システム標準化への取組とDXの推進でございます。

地方公共団体情報システム標準化に関する法律等の関係法令に基づき、移行計画に沿って地方公共団体情報システムの標準化を順次実施してまいります。また、行政のあらゆる分野に対して、デジタル技術を上手に活用し、区民サービスの向上及び庁内の業務改革に取り組んでまいります。

行政手続のオンライン化については、国が推奨する手続に加え、区民からの申請件数が多い手続を優先して進め、オンラインで申請可能な手続を増やしてまいります。キャッシュレス決済については、今年度の戸籍住民課での拡充に続き、令和7年度は地区サービス事務所での本格導入をはじめ、税証明手数料などへ順次、拡大してまいります。使用料についても貸室の見直しの中で令和7年度から予約システム更改と連動してキャッシュレス決済を導入いたします。また、納付相談など各種相談業務のオンライン化についても検証しながら継続実施してまいります。

加えて、生成AIをはじめとする新技術の活用及び探索、継続的な業務改善による生産性の向上と、デジタル人材の育成や推進体制の整備を行い、区のDXビジョンに掲げる9つの姿の実現に向け、各部署が自律的にDXを推進していく仕組みを定着させてまいります。

(5)中長期の見通しを踏まえた行財政運営の推進

五点目は、中長期の見通しを踏まえた行財政運営の推進でございます。

学校施設をはじめとした老朽化する区有施設の計画的更新や、自由が丘駅周辺地区及び中目黒駅周辺地区における市街地再開発の推進など、長期的ビッグプロジェクトが本格化していくことを見据えますと、今後、区債残高は増加していく一方、基金残高は減少の一途をたどり、大変厳しい財政状況となることが見込まれます。

中期経営指針で示したとおり、先行きの見えない社会情勢や国の不合理な税制改正等により、区の財政状況は依然として不確実性の高い状態が続きます。一方で、区有施設更新のほかにも、地球温暖化への取組など社会的要請の増加と新たな感染症が発生した場合の対応への備え、高齢化の進展に伴う社会保障費の増など、経営資源を投入すべき課題が増える要素が圧倒的に多くございます。

こうした見通しの中で的確な行財政運営を行っていくため、令和7年度は組織執行体制の強化を図り、中長期の見通しを踏まえた取組を行ってまいります。まず、区有施設見直し方針及び区有施設見直し計画の改定に着手し、この取組と並行して、目黒区民センターについて、これまでの検討内容を踏まえつつ、改めて未来を見据えた最適なあり方を検討いたします。また、事務事業評価制度の導入に向け、公会計の更なる活用を検討いたします。加えてEBPMやデータ利活用の考え方を広く組織内で共有するため、職員のデータリテラシー向上を図ってまいります。

令和7年度予算編成の概要

令和7年度予算案につきましては、「区民の暮らしを支え、スマートで強靭なまちをつくる目黒未来予算」と位置付けました。新たな実施計画や、先ほど申し上げました5点の重要課題に対する取組を積極的に進めていくとともに、引き続き物価高騰から区民を守る対策に取り組むよう、編成を行っております。

一般会計予算では、区税収入について、ふるさと納税によるマイナス影響が右肩上がりとなっている一方で、6年度に行われました個人住民税の定額減税による減収分の復活や、雇用・所得環境の改善により給与収入が増となっていることなどにより、前年度当初に比べ、プラス31億1千万円余を歳入予算に計上しております。また、特別区交付金についても、企業収益の堅調な推移による法人住民税の増収が見込まれていることなどから、前年度比で7億円をプラス計上しております。

歳出につきましては、実施計画事業に前年度比でプラス70億円余となります193億8千万円余を計上するほか、重点化対象事業に82億3千万円余を計上し、真に必要性・緊急性の高い事業に予算を配分するよう努めております。財政調整基金については、歳入を上回る歳出の財源不足を補うため、25億4千万円余を取り崩す一方で、将来の財政需要や区有施設の更新に安定的かつ柔軟に対応するため、財政調整基金、施設整備基金、学校施設整備基金に積極的な積み立てを行っております。

一般会計の予算規模は1,423億4千万円余で、前年度当初と比べて123億1千万円余、率にして9.5パーセントの増となるものです。また、特別会計につきましては、国民健康保険特別会計は272億1千万円余、後期高齢者医療特別会計は82億8千万円余、介護保険特別会計は225億9千万円余となり、一般会計と3つの特別会計との予算額の合計は2,004億2千万円余で、前年度当初と比べ、121億4千万円余の増となっております。

平和と基本的人権の尊重

基礎自治体としてあらゆる施策の根底に据えております、「平和と人権・多様性の尊重」について申し上げます。

戦後80年を迎える中で、戦後生まれの区民の方の割合が9割となっている状況や、被爆された方々の高齢化等もあり、さきの戦争に対する意識の風化が懸念されております。

これまでも常々申し上げてきたところでございますが、戦争の記憶を風化させることなく、平和の尊さへの理解を深め、争いのない平和な社会を次代に引き継ぐことは、私たちの使命であると認識しております。

また近年、いじめや虐待、様々なハラスメントなど、個人の尊厳や人格を傷つける重大な人権侵害が深刻な問題となっております。

すべての人が互いの人権や尊厳を大切にし、誰もが一人の人間として尊重され、争いや差別、偏見がなく、個性や違いを認め合う地域社会づくりに取り組んでまいります。

おわりに

以上、区政運営に臨む私の所信を申し述べました。

令和7年度は、私の6期目の任期3年間の折り返しの年度となります。昨年、区民のみなさまの付託をいただいた公約事項について、さまざまな調整を図りながら、実現に向け着実に歩みを進めてまいります。日々の暮らしをしっかりと支えつつ、その土台となる行財政運営を持続可能なものとしていくために、責任ある取組を進めてまいります。

区の経営資源であるヒト・モノ・カネ・情報・時間(とき)の有効活用を更に進め、適切な経営判断のもと、急速な社会情勢の変化にスピード感を持って対応してまいります。

私は、組織運営にとって最も重要なのは、ヒト、すなわち職員であると考えております。職員エンゲージメント向上の取組を進め、組織の活性化や職員の士気向上を図るとともに、ゼロ・ハラスメントの実現に向けた制度の充実などにより、安心して働き続けられる職場環境の充実を図ることで、人財が定着し成長する組織の実現を目指してまいります。

区民の皆様のご期待に応えられるよう、区民福祉の更なる向上に向けて山積する課題の解決に全力で取り組み、「さくら咲き 心地よいまち ずっと めぐろ」の実現に向けて邁進してまいりたいと存じます。

改めて、議員各位と区民の皆様の、一層のご理解とご協力をお願い申し上げ、所信表明といたします。

 

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