更新日:2025年10月16日

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元気なお店、活気ある事業所をご紹介します「株式会社川邑研究所」

企業情報

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「株式会社川邑研究所」の外観

所在地

東京都目黒区目黒一丁目5番6号

代表取締役

川邑 正広

問い合わせ

電話:03-3495-2121

創業

1911年

真空で「はやぶさ」の翼を駆動させる凄腕潤滑剤を開発

JR山手線・目黒駅から徒歩5分の川邑研究所は独自の機能性塗料「DEFRICレジスターマーク」(デフリック)の開発製造販売を行っている会社で、実は宇宙開発にも密接に関係している革新的な企業です。これまでにH-II(H2)ロケットや惑星探査機「はやぶさ」などの機体を製造する際に「DEFRICレジスターマーク」が採用され、現在もJAXAやNASAをはじめとする宇宙開発機構から宇宙用のコーティング剤の開発依頼を受けています。

「私たちが作っているのは、いわゆる潤滑剤です。例えば、「はやぶさ」のような探査機では、宇宙空間にさらされる翼などの駆動部があります。そうした部分をそのまま真空状態で動かそうとすると、金属同士が溶接したようにくっついてしまうことがあります。そのため潤滑するものが必須となるわけです。ただ、真空では油は蒸発してしまうので、固体の状態の潤滑剤を使用します」と話すのは同社の三代目代表・川邑正広さんです。

代表取締役 川邑 正広氏の写真
代表取締役 川邑 正広氏

同社の創業は明治44年。川邑さんの祖父に当たる川邑春松氏が、目黒に川邑研究所を設立したのが始まり。理化学及び貴金属類の選鉱・製錬の研究を主業務とし、なかでも金の選鉱・製錬では特殊技術を開発しています。戦時中は、当時の大蔵省から造幣局目黒研究室の設置を依頼され、金・銀の増産についての研究に邁進。戦後、固体潤滑剤の研究を行い、1959年に「DEFRICレジスターマーク」の開発販売をスタートし、現在に至っています。

「第一次世界大戦の当時、靴磨き用にドイツから靴墨の染料を輸入していましたが、その靴墨づくりに祖父がチャレンジしたのがきっかけと聞いています。それが軌道に乗って、昭和の初め頃には生業となり、やがて金の選鉱・製錬に繋がっていくわけです。ただ、戦後は会社も丸焼けになり食べるものにも困り、シベリア抑留から戻ってきた父が大豆を粉々にして、インスタント豆腐のようなものを作ってしのいだこともありました。やがて日本が復興していくなかで、自動車部品の下請けをやっている知人から相談されたのがきっかけで、潤滑剤を開発したという流れです。これまでに染料や大豆など変遷はありますが、すべてに共通しているのは、「細かく粉砕する」という技術。その点ですべての経験が今に繋がっていると考えています」

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工場内、作業風景

今後も広がる機能性塗料の新たな可能性

二流化モリブデンを中心に、フッ素樹脂やグラファイトなどから作られる潤滑剤「DEFRICレジスターマーク」は、宇宙関連のほか、自動車の部品や重工メーカーの発電インフラ設備、カメラなどの光学機器、家電など日常生活に欠かせない多くのものに採用されています。

「テフロンのフライパンの仕組みが分かりやすいと思いますが、食材とフライパンとの間に潤滑させるものがないと食材が焦げてしまいますよね。

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世の中で潤滑がないと生活が成り立たないものが実は多いので、常に一定のニーズはありますし、潤滑の世界では老舗の一つではあります。また弊社には営業部がなく、技術者がクライアントと直接打ち合わせをしながら課題解決に取り組むスタイルも、私たちの強みの一つです。」

川邑さんが三代目代表として、先代から意識的に変えたこともあります。

「二代目の父が1977年に正式に法人化しまして、ある意味、父も創業者とも言えるわけですが、何事にも自ら先陣を切って社員を引っ張っていくような人でした。いわゆる創業者らしい代表だったわけです。その点、私に代替わりしてからは、会社としての“構造”を整えることを大切にしています。つまり、私がいなくても組織がきちんと機能し、持続的に成長できるような体制づくりを進めています。」

会社がある程度成熟した上で、組織をよりシステマティックにしたというわけですが、かく言う川邑さん自身は根っからのエンジニア。そんな技術屋視点で考えている新しい未来像もあるようです。

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「はやぶさ」の翼の部分に「DEFRICレジスターマーク」が採用されている

「あくまで潤滑がメインではありますが、取り扱っているのは機能性塗料なので、例えば放熱断熱などの機能を塗膜に持たせるとか、塗料でできることはまだまだたくさんあると考えています。これまでの経験で言えば、やはり「はやぶさ」の影響は社内外で大きかったですね。クライアントからテーマを頂いて、目的や用途に応じてカスタムメイドするのが得意な会社なので、その特性を今後も存分に活かしていきたいと考えています。もちろん、小ロットからの対応も可能です。これまでの会社の歴史を振り返ってみても、まずは染料から始まったわけですが、その背景にあったのが困っていることに対して解消できるよう応えることなのです。社風にも、なんとかして課題解決したいという本能的な姿勢があって、そのモチベーションが今日の仕事に繋がってきているような気がします」

まさに技術大国・ニッポンが誇る縁の下の力持ち。これから生まれる未来や最新技術の中でも、川邑研究所の果たす役割は決して小さくないはずです。

お問い合わせ

産業経済・消費生活課 中小企業振興係

ファクス:03-3711-1132